こころ論文研究室
創造

発散と収束は、それぞれ別の「探索パターン」と結びついている

📄 Divergent and Convergent Creativity Are Different Kinds of Foraging.

✍️ Malaie, S, Spivey, MJ, Marghetis, T

📅 論文公開: 2024年

創造性 認知科学 発散的思考 収束的思考 フォレージング 実験 体化認知

3つのポイント

  1. 1

    空間を広く分散して探索した人は、その後の発散的思考課題で優れた成績を示した。

  2. 2

    反対に、同じ場所に繰り返し収束して探索した人は、収束的思考課題で優れた成績を示した。

  3. 3

    この結果は、高次の創造的思考が進化的に古い空間探索メカニズムを再利用している可能性を示唆する。

論文プロフィール

  • 著者: Malaie S, Spivey MJ, Marghetis T / 発表年: 2024 / 掲載誌: Psychological Science
  • 対象: 米国の成人(都市地図を使った空間探索課題と創造性課題を組み合わせた実験参加者)
  • 調査内容: 空間上の探索パターン(分散型 vs. 収束型)が、その後の創造的思考(発散的・収束的)の成績に影響するかを検証した被験者間実験
  • 証拠の強さ: 単発の実験的研究であり、低程度の証拠です。参加者数・効果量・統計的詳細は抄録からは確認できません。

エディターズ・ノート

創造性の「発散」と「収束」は、しばしば対の概念として語られます。この研究は、それぞれが単に思考スタイルの違いにとどまらず、空間を移動するときの身体的な探索パターンと対応しているという仮説を実験で検証しました。「創造」という様式を、進化的な行動原理から照らす視点として届けます。

何がわかったか

研究者たちは「創造性は戦略的なフォレージング(餌探し行動)として機能しているのではないか」という問いを出発点にしました。フォレージングとは、動物が食料や資源を空間の中で探索する行動のことです。この概念を人間の認知に適用し、米国の成人に都市地図上での空間探索課題を実施しました。

参加者はランダムに 2 グループに分けられました。一方は地図上で複数の分散した場所を探索し(発散的探索)、もう一方は同じ場所に繰り返し戻るパターンで探索しました(収束的探索)。

その後、参加者はそれぞれ発散的思考課題と収束的思考課題を解きました。

空間探索パターンと創造的思考の対応関係(概念図・抄録に数値なし) 0 15 30 45 60 75 相対的な成績(概念) 75 発散探索→発散思考 45 発散探索→収束思考 40 収束探索→発散思考 72 収束探索→収束思考
空間探索パターンと創造的思考の対応関係(概念図・抄録に数値なし)
項目 相対的な成績(概念)
発散探索→発散思考 75
発散探索→収束思考 45
収束探索→発散思考 40
収束探索→収束思考 72
空間探索パターンと創造的思考の対応関係(概念図・抄録に数値なし)

結果は、パターンの交差性を示しました。分散探索をした参加者は 発散的思考 (アイデアを広く展開する能力)が高く、 収束的思考 (ひとつの正解に絞り込む能力)は低かった。収束探索をした参加者ではその逆が起きました。

🔍 発散的思考と収束的思考の違い

発散的思考とは、ひとつの問いやテーマから多様なアイデアを生み出す能力です。例えば「レンガの使い道を 2 分でできるだけ多く挙げる」といった課題で測られます。

収束的思考は、複数の手がかりから唯一の正解に絞り込む能力です。「手がかり語に共通する一語を見つける」のような課題(Remote Associates Test など)がよく使われます。

どちらも創造的な活動には必要であり、優劣の問題ではありません。

🔍 この研究の限界と注意点
  • 抄録からは参加者数・効果量・統計的有意水準が確認できません。知見の大きさを客観的に評価するには原文が必要です。
  • 被験者間デザインのため、同一参加者の中での因果を示したわけではありません。
  • 米国の成人が対象であり、文化的・地域的一般化には慎重さが必要です。
  • 空間探索が思考パターンを「引き起こした」のか、同じ傾向を持つ人が両方に現れたのかは、この実験デザインだけでは区別できません。

理論的枠組みとの接続

この研究は「体化認知(身体的な経験が高次の思考を支えるという考え方)」と「神経再利用(高次認知が進化的に古い神経回路を転用するという理論)」の両方に根ざしています。

探索と活用 のフレームとも接点があります。分散探索は新しい情報を求めて広く「探索(explore)」する行動に、収束探索は既知の資源を繰り返し「活用(exploit)」する行動に対応するからです。

同時に、ギルフォードの 拡散的思考 理論の観点からも位置づけられます。発散的思考と収束的思考を「認知スタイル」として測定してきた従来の研究に対し、この研究はそれらが身体的な探索行動とも系統的に結びついていることを示そうとしています。

自己観測への手がかり

自分が何かを探索するとき、どちらのパターンをとりやすいか振り返ってみると、思考の癖が少し見えてくるかもしれません。新しいアイデアを広げたいときと、ひとつの答えに絞り込みたいときで、自分が自然にどんな動き方・視野の広げ方をしているか。それ自体を観察する視点として、この研究は使えるかもしれません。

ただし、この知見を「だから広く動けばアイデアが出る」と直接適用するのは早計です。研究はあくまで相関を示しており、操作の効果は未確定です。

読後感

あなたが何か行き詰まりを感じたとき、自分の「探索のパターン」をどのように変えてきましたか?