こころ論文研究室
動機

「内側からのやる気」が、職場で活き活きすることを支える——看護師337名の調査

📄 Emergency department nurses' intrinsic motivation: A bridge between empowering leadership and thriving at work.

✍️ Li, C, Niu, Y, Xin, Y, Hou, X

📅 論文公開: 2024年

3つのポイント

  1. 1

    救急外来の看護師337名を対象に、リーダーの権限委譲・内発的動機づけ・職場での活き活きさ(thriving)の関係を質問紙で調べた横断研究。

  2. 2

    内発的動機づけが、リーダーの権限委譲と「職場で活き活きすること」をつなぐ媒介役を果たしていた。

  3. 3

    横断研究のため因果は示せず、ひとつの職種・文脈での関連にとどまる。

論文プロフィール

  • 著者: Li C, Niu Y, Xin Y, Hou X(2024年)
  • 掲載誌: International Emergency Nursing
  • 対象: 救急外来の看護師337名
  • 調査内容: 上司の「権限委譲型リーダーシップ」、本人の 内発的動機づけ 、職場で活き活きと働けている感覚(thriving at work)の関係を質問紙で測り、構造方程式モデリングで分析した。
  • 証拠の強さ: ある時点での自己報告を関連づけた 横断研究 です。媒介関係は示せても、因果の向きは示せません。

エディターズ・ノート

「やる気は人から与えられるのか、内側から湧くのか」——この問いは、働く大人なら誰もが抱えるものです。この研究は動機(動機の様式)を入り口に、外からの関わりと内側のやる気がどうつながって「活き活きしている状態」に届くのかを照らしています。

何がわかったか

ここで言う「職場で活き活きすること(thriving)」は、活力を感じながら学び成長している感覚を指します。研究では3つの要素を測りました——上司が裁量を与え自律を促す「権限委譲型リーダーシップ」、本人の内発的動機づけ、そして活き活きさです。

主な結果は次のとおりです。

  • 権限委譲型リーダーシップと活き活きさには、正の関連があった。 裁量を与えられていると感じる人ほど、活き活きと働けている傾向がありました。
  • 内発的動機づけも、活き活きさと正の関連があった。
  • 内発的動機づけは、リーダーシップと活き活きさをつなぐ「媒介役」だった。 上司の関わりが活き活きさに届く経路の一部に、本人の内側からのやる気が挟まっている、という構図です。
🔍 内発的動機づけとは何か

内発的動機づけ(intrinsic motivation)とは、報酬や評価のためではなく、その活動それ自体が面白い・意味があると感じて取り組む状態のことです。逆に、給料や叱責の回避のために動くのは外発的動機づけと呼ばれます。

この研究の含意は、「裁量を与えられる」といった外側の条件が、いきなり活き活きさを生むのではなく、まず本人の内側のやる気を経由して効いている可能性がある、という点にあります。

🔍 この研究の限界
  • 横断研究のため、「リーダーシップ→動機→活き活きさ」という時間的な因果を確かめたわけではありません。逆向きや双方向の可能性も残ります。
  • すべて自己報告の質問紙で測られており、回答の偏りが入りうります。
  • 対象は中国の救急外来看護師という特定の職種・文化で、他の職場にそのまま当てはまるとは限りません。

理論的枠組みとの接続

自己決定理論 (Deci & Ryan)は、人が自律性・有能感・関係性を満たせるとき、内発的動機づけが育ち、よりよく機能すると考えます。上司が裁量を与えることは「自律性」を支える関わりと読め、それが内発的動機づけを介して活き活きさに届くという今回の構図は、この理論の予測と方向性が一致します。ただし横断データである以上、理論の因果的な主張をそのまま裏づけるものではありません。

自己観測への手がかり

自分が仕事で活き活きしていると感じるとき、その手前には何があるでしょうか。誰かに裁量を任されたこと自体でしょうか、それとも、それによって「これは自分がやりたいことだ」と内側から思えたことでしょうか。この研究は、外からの関わりが内側のやる気を経由して効く可能性を示しました。自分のやる気がどこから湧いているのかを眺めることは、自分の動機の様式を知る手がかりになるかもしれません。

読後感

あなたが最近、仕事で前のめりになれたのは——任されたからでしたか、それともその中身に自分なりの面白さを見つけたからでしたか?